理事長ごあいさつ

ごあいさつ

理事長 田中昌宏

 西北の空に冠雪した日光連山、さらに遠く北には那須の山々が聳えています。凍てつく冬の朝、旭日に映える日光連山は息を呑むような美しさです。その神々しさに魂が揺り起こされて感動の余り思わず手が合わさるほどです。東には常陸の筑波山が逆光の中で雄大な姿を誇っています。東京から北に90km、標高54m、関東平野の真っ直中、栃木県下野市に医療法人小金井中央病院は28年前に産声をあげました。現在は一般病棟42床、地域包括ケア病棟43床、療養病棟50床、人工透析40床、そして、介護サービス付き高齢者住宅「ぬくもり」40室、ショートステイ10床も併設する医療法人です。医療人の矜持として「轍鮒の急」を高く掲げ、自治医科大学病院、獨協医科大学病院、そして近隣医療機関と役割を分担して地域住民の皆様の医療・介護の需要にお応えすべく過不足のない医療機能の提供に努めて参りました。おじいちゃん、おばあちゃんが長生きをしてくれることは御本人はもとより家族の隊にも喜ばしい限りですが、国民の多くが長寿になるという高齢社会の到来は公的年金、医療費、介護費用など社会保障費の増大などで国家財政は大きく疲弊することになります。此の低成長時代、後に続く若年世代にも過重な負担を強いることになり単純に喜んでばかりはいられないのです。2025年には戦後のベビーブーマーは後期高齢者に到達します。超高齢社会に対し厚労省は2014年から地域包括ケアシステムを導入して医療・介護・在宅の垣根をはずし風通しの良い効率的・重点的なサービスの提供を目指しています。一方、財政制度等審議会(財務省)も「社会福祉費の自然増を3年間で1兆5000億円以内(年間5000億円以下)に抑制する」を断行して、厚生労働省の2016年度予算6700億円の概算要求を5000億円に切り詰めました。無い袖は振れない、決めたことは断行するという政府の強い意志の表れです。

 限られた医療資源を有効に活用することに異論はありませんが、施策はややもすると受療者の皆様には厳しく感じられることがあります。我々、医療機関は施策の内容を十分に咀嚼して地域住民の皆様に必要な医療・介護を安心して提供できるように励んでいきます。このジレンマの責任を政府だけに押し付けても解決は困難でしょう。政府、医療機関、医療関連業者、受益者たる国民がそれぞれの立場で知恵を絞り協働して、等しく、少しずつ、我慢をすることが大切なのかもしれません。いかに厳しい時代になろうとも、いかに齢を重ねようとも命や健康が大切であることは論を俟ちません。地域住民の皆様が毎日を気持ち良く、元気に過ごしていけることを祈りながら、小金井中央病院も職員一同、これからも為すべきを為して地域住民のお役に立てるように努力を重ねてまいります。

2017年2月4日